2014年11月28日金曜日

QREP旅行記(シリコンバレー・ツアー by 九州大学)

以下は、QREPでシリコンバレーに滞在中の自分のFacebookページから抜粋したものです。日記をそのままコピーしており、前後の文脈が読みにくい点はどうか、ご了承ください。

(一日目)
QREP初日。一日目、昼間はサンフランシスコ市内やスタンフォードを見て回り、夕方から90分一コマの授業を受けた。QREPの趣旨の理解とシリコンバレーで何を学ぶべきかを2人の先生が講義され、その後、九大と早稲田のOBでSV在住の皆さんを含めたパーティが開催された。
今まで三日間過ごしたサンフランシスコと、ここシリコンバレー(サンノゼ)は全く別の場所だと考えても良い。世界の名だたるIT企業の集積地であり、イノベーションの聖地とも言われるように、数々のスタートアップがここで誕生した。
集まった先輩方の話を聞いて、分かったことがある。この地には一種の不思議な空気感が形成されているというが、どうやらその正体は「人と人とのネットワーク」にあるということだ。ちょうど、中国に華僑ネットワークが存在し、それがビジネス関係の紐帯となっているように、ここに生きるたくましい日本のビジネスマンにもその繋がりの網が存在する。もちろんそれは日本人という枠ではなく、イノベータークラスタというもっと大きな集合体だ。例えばそれは、オープンイノベーションのような同業他社の連携であったり。
そのネットワークは一種の「信頼価値」であり、実力がある者しか繋がることはできない。なぜなら、ある紹介者が質の悪い人間をネットワークに紹介してしまうと、その紹介者自身が悪い評価を受けてしまうことになるから。紹介されて相手をするということは、貴重な時間と体力をわざわざ使わなければいけないことを意味し、刻一刻が千金のビジネスマンたちにとって、意味の無い時間を過ごすことはまさに命を削ることになる。時にはマイナスの被害も受ける可能性もある。
そこでそこに属するには本人の実力が問われることになるが、その実力というのは専門性であったり交渉力であったり人脈、アイデアといったテクニック的なことから、誠実さや粘り強さ、熱意やビジョンといった精神的なことまで幅広い。まさにアントレプレナーシップの総合力戦みたいになってくる。
ただもう一つのポイントとして、失敗してもそれを許す文化があり、何度でも敗者復活戦に出ることができるという点が素晴らしい。自分のようにとりあえず、やってみる、即行動するタイプからすると天国なような環境。だから勇気をもって先輩方に自分がやりたい事をアピールしていたら、何と自分のビジネスのヒントになるような方を紹介して頂ける運びとなった。
初日にして、これ!シリコンバレー、熱い!熱すぎる!!この調子で一週間のプログラムを過ごしてしまったら、最後にはどうなるのか、心配になるほど。もちろん、紹介して頂くからにはその機会に応えれるように準備をしっかりしていかなければと、別のプレッシャーも受けつつ、初日が終わった。いやぁ〜、ワクワクするぜ!



(二日目)
シリコンバレーの学習プログラム、QREP二日目。今日は朝から晩までホテルの会議室に缶詰でひたすら勉強を続けました。本当に濃密すぎる12時間で、頭のCPUをフル稼働して吸収しました。
一限目、起業家精神論とVC論。
まずはWiLというVCのファウンダー、伊佐山さんのお話からスタート。「シリコンバレー流 世界最先端の働き方」という本を書いた方です。日本の大手企業から合計数百億の資金を集め、シリコンバレーと日本を結ぶ一大プラットホームの構築を狙います。
授業内容は、日本とアメリカのベンチャー企業の現状をざっと紹介された後で、日本がベンチャーに力を入れる必要性を熱く語られました。日本ではベンチャーは20代くらいの若手がやるものだとされていますが、アメリカでは40代でも普通に起業する人たちはいるそうです。
というのも、彼らは有名企業での就職を一つのステップとしてしか捉えておらず、むしろそこでの専門的な経験を生かし、そこで形成した仲間たちと一緒に起業をして、成功を収めるというのが定石のようです。様々な角度から数字を見せられて、最後には起業しない理由が見つからないくらいの心境になりました。
ベンチャーは少ない資本で大きな価値を生み出す、極めて効率的な経済モデルを創り出すことができます。つまり日本がもっとアントレプレナーの育成に力を入れ、それを望む人々が増えてくれば、経済成長の大きな原動力になるのです。
Facebook、Gmail、Twitter、iPhone、iPad、Tesla、全て10年前に存在しなかったものです。このようなイノベーションを、日本で起こすことができれば一気に形成も逆転します。そして時代は大きく動いています。そのためには「世界を変える!」という大きなビジョンを持って、スケールをデカく考える。ちまちましないで、やってみる!という積極性や冒険心が必要です。
また、特にこの「世界を変えてやる」というのは重要なようで、単純に小金を稼いでやろうくらいのレベルではベンチャーは続かないと言います。これを聞いたとき私は、イノベーションの深み、スゴみを感じました…。
スティーブジョブズの座右の名「宇宙に衝撃を与える」。これくらいのビジョンを持って、体当たりをする必要があるのです。そんな集団がいるシリコンバレーです。当然、世界一にもなりますよね。逆を言えば明治維新の時は、それくらいの集団が日本にもいたという事でしょうけど。
イノベーションの本質をえぐるような授業で、呆然としてしまいました。
二限目、起業家精神論、新ものづくり論。
ビーンズインターナショナルの遠藤さんの講義。遠藤さんは日本の製造業の強みと弱みを知り尽くしている方です。シリコンバレーの歴史において、日本の製造業がいかにして成長し、衰退してきたのか、その栄枯盛衰を実体験をもとに、じっくり分かり易い言葉で説明して頂きました。
ソフト一辺倒だったGoogleやFacebookのようなIT企業が最近はどんどんものづくりに手を出してきている。採用する人材もハードの技術者をかき集め、自社で使う主要な部分のハード類は自前で設計する。そんな動きが見られるようです。
そんな中で日本のものづくりは、どうやって対抗していくのか…。その秘策を聞くことができました。それはやはり世界の動きを観察し、自分たちの強みがどこにあるのかを把握すること。キックスターターというようなクラウドファンディングで、3Dプリンタで作った優れた作品を売り出すデザイナーの卵たちに対し、台湾のメーカーなどはシリコンバレー現地にオフィスを構え、うちで製品化しないかと、アプローチをかけているようです。
このようなことを日本の町工場はなぜやらないのかと。日本の工場は発注先の大手から、仕様をガチガチに固められた上、コストを叩かれ、今まで死ぬ思いでプロトタイプを作ってきたといいます。そのノウハウがある。先ほどの3Dプリンターなどの出現で、アイデアをカタチにするためのツールは出てきた。しかし、それを製品としてきちんとビジネスに載せるための製造をすることができるという点で、日本はアドバンテージを持つ。だからこそ、日本の製造業、特に中小はもっと世界に出ることでその可能性を開け!というお話。
精神論の部分で、印象に残ったのは「ドッグイヤー」。これは本当にスゴいですね。これは今、現実に私が実感していることですが、この件について語ると文章が2倍になるので、後日お話します。
とにかく、スピードが命です!これは絶対的に賛成。何よりもスピード。私は常々、時間は生命の本質だと考えています。だから、その時間を極限まで有効活用することについては、非常に賛同できますし、そういう文化は好きですね。
三限目、Social Entrepreneurship。
この方もスゴかったです。Benetechという社会起業家Firestoneさんによるお話でした。この講義は英語の授業でした。
通常の企業が投資に対するリターンの効果を追求するならば、社会起業家は社会貢献を価値として求めます。だからそこに関わる人たちは、ありきたりのCSRではなく、本気で社会に価値を与えたいとコミットしている集団です。シリコンバレーと言えば、お金だけしか見えていない人種も一部いると言う事ですが、彼らはそれだけでは満足しない。このようなビジネスに関わっていることが楽しみであり、ステータスであり、人生なのです。
実際にやっていることはソフトウェアの開発なのですが、盲目の人にオーディオを音声に変換して提供するクラウドであったり、人権侵害のデータベースを作り、戦争犯罪などを調査するシステムであったり、環境関連のプロジェクトマネジメントを支援するツールであったり。
様々なプロジェクトを手がける中、一貫しているのはプロジェクト選択時の精査。いかにそのプロジェクトが社会的価値を生むかというポイントをクライテリアとして、決められます。市場規模では考えない、ニッチでもいい。それが社会問題を解決できるのであれば、というコンセプトです。
最後、質問をしました。「NPOのような団体は、SNSやクラウドファンディングのような仕組みを使って、もっと広く人々のサポートを得る必要があるのではないか」と。すると答えは、ネットだけが答えではないと言われました。バーチャルでの支援は、簡単だし広告としての力はあるけど、実際の現場では、リアルな「ボランティア」の方が役に立つので重要であるケースが多いと。まさにその通り!私はある問題を抱えていたのですが、謎が解けました。
四限目、国際キャリア論。
最後も徹底的でした。日本各地からシリコンバレーにやってきた留学生たちがどのような道を歩み、そしてこれからどのようなグローバル人材に成長していくのか。実際のモデルケースとしてパネルディスカッション形式で、コーディネーターの谷川先生がその知見を引き出しました。ここでも名言がたくさん出てきたのですが、これ以上書くと睡眠時間が削られるので代表的な語録集を述べますと。。。
「こっちの人たちはそもそも考え方が違うし、主張が強い人が多い。しかし、ある程度わかりあう必要があることは相手も分かっている、だから実力を見せつければ妥協点も見つかる。」
「日本の学部生活は異常。全く勉強をしない。正直言って、ちゃらんぽらん。」
「日本人は外人だけでなく、アメリカに留学した日本人すらも異物化してしまう。そうすることで才能は益々日本から離れて行く。」
「二カ国語以上で情報をインプットすると、情報量は数倍になり、一度それを体験するともう後には戻れなくなる。」
「日本の学生の頭の良さのポテンシャルは、ハーバードやスタンフォードの学生とあまり変わらない。ただ問題が英語力。英語力が低いだけで、バカのように思われる。そこは死ぬ気で勉強して克服してほしい。」
「年配者は既得権益を守るために、間違っている方向に走り続ける。止まれといっても無理。だから若者が自由な心と柔軟な頭で時代を変えていくべき。」
「シリコンバレーという神格化された世界を、自分の常識に引きずり下ろす!!」
VCにインターンで来ていたパネラーの、この最後の台詞には痺れましたね。私もここに来るまでは、この地を聖地化してそれこそクラウドの上の存在だと考えていました。
しかしながら、GoogleやFacebookがある、このイノベーション・ビッグバン・エリアで生きる人々と出会い、話し、交流していく中で、その空気に馴染んでいく。別にここは特別な場所でも何でもない。その感覚が腹落ちした時に、色眼鏡をかけない状態で、イノベーションを見つめることができるかもしれない。起業家精神は、気づいたら自分の中に見えるのかもしれない。
だって、人が生きていくことってアントレプレナーシップそのものだ。誰もが持っている、生きる力なのだから。あまりに刺激的な人たちからのシャワーを浴びまくって、初日から目頭が熱くなるほど感動しました。いやぁ、明日はオラクルやシスコへの訪問。まだまだ心の旅は始まったばかり!


(三日目)
シリコンバレーの学習プログラム、QREP三日目!!
スケジュールというと、日中はシリコンバレーの企業訪問(オラクル、シスコ、プラグアンドプレイ)。夜はSVIF(シリコンバレーイノベーションフォーラム)という現地でご活躍の方々とのコラボ開催の勉強会でした。
今日は書き始めの段階ですでに現地時間の一時。さすがに時間がありませんので、ポイントを絞って書きます。
①オラクル
オラクル社員の方の案内で、見学を行ないました。オラクルのビルは開発製品ごとに別れており、それぞれ厳重なセキュリティ体制が敷かれています。いろいろお聞きしたのですが、印象に残ったことは、二点。施設のことよりも、そのワークスタイルに興味を持ちました。
一つは、シリコンバレーで働く人たちのキャリアスタイルです。こっちの企業はレイオフする時は、容赦なくばっさりと刈り取ります。けれど、首になった人材には必ず周囲の中小企業のヘッドハンターが群がります。大企業のノウハウが欲しいからです。結局、再度シリコンバレーの企業ではたらくことになるので、シリコンバレーというエコシステムを外れることはない。これは非常に興味深いポイントでした。彼らは転職先で実力をつけ、また次のキャリアアップを目指すことができるわけです。
二つ目は、リクルーティングのされ方です。採用は完全に学歴とコネのようです。もしもシリコンバレーの有名企業に入りたいのであれば、少なくとも全米トップの大学で、何らかの分野で世界一になり、就職先の企業内部にネットワークをつくり、実績を積んだ状態でアプライ(志願)する必要があるそうです。かなりハードルは高いけど、実際にやっている人を見ると、できなくも無いような気になってくるから不思議です(笑
②シスコ
言わずと知れたルーター企業。けれど今ではトータルソリューションカンパニーへ生まれ変わろうとしていました。GoogleやApple、AmazonがIOT(モノのインターネット)を目指すように、次なるネット界の派遣争いに参加する気、満々でした。むしろ、ネット界どころか現実とリアルが融合する場所での、全産業が入り交じる本気の戦いです。
ルータといえば、私はかつて日本テレコム(現ソフトバンクテレコム)に所属しておりましたのでなじみが深いのですが、インターネットの心臓です。それを作っていた会社が、医療ソリューションなどに手を出すなど、その頃は思いもよりませんでした。さすがドッグイヤー、10年立てはビジネスモデルなど全く別のものにその形態を変えてしまうのですね。
企業がR&Dを進める方法が三つあります。一つ目は自社開発、二つ目はアライアンス、三つ目がM&Aというお話でしたが、買収が最も早く簡単であると言われました。これはシスコのM&Aの実績があるからこそ言えることであり、通常の企業はこの戦略を簡単に取れるものではありません。そういう意味では、彼らの競争優位性は明らかにここにあるように思えます。もちろん、GoogleやFacebook、Apple、Amazon、Microsoft等の世界の競合もA&D(買収開発)を多用し、ノウハウを蓄積しているでしょうから、うかうかはしていられません。そういう意味で、ある種の緊張感も感じた企業見学でした。
③プラグアンドプレイテックセンター
福岡県オフィス(FCOCA)のご担当に、施設内を詳細に案内して頂きました。昼間の写真レポートで少し触れましたが、ここはシリコンバレーの中でも老舗のインキュベーションセンター。要するにまだ生まれたてのベンチャー企業を育てるためのプラットホームです。詳細は先ほど紹介したので省きます。
④トライアルリテールエンジニアリング
トライアルがシリコンバレーに進出し、小売業を展開するのではなく、なぜかここシリコンバレーでビッグデータビジネスをスタートしていました。最初は頭にハテナだったのですが、その大きなビジョンを聞いて、納得しました。
これから高齢化社会を迎える日本において、コモディティを扱う小売業の市場がシュリンクするのは必至です。というわけで、「ターゲットは国際展開だ!」かつ「消費者に一番近い小売りのアドバンテージを生かした顧客のビッグデータ活用だ(SCM)!」ということで、その足がかりとしてのシリコンバレーへの進出ということで、非常にビジョナリーなモデルでした。
小売世界一のウォルマートがとる手法、サプライチェーンを自由自在にコントロールすることで経費を圧縮、収益を生み出す。それに倣いつつ、かつシリコンバレーの聖地で先進的なビッグデータの技術を探しながら、新しいモデルを構築する。今後が楽しみです。
⑤SVIF(シリコンバレーイノベーションフォーラム)
と…ここまで書きましたが、最後にすごい講演が控えておりました。。。
講演者の吉川さんはシリアルアントレプレナー(筋金入りの起業家のこと)で、今までいくつもの大成功をおさめているのですが、そんな方がなんとシリコンバレーでの起業についての裏話をしてくれました。
これは、衝撃でした。全ての内容を書くとあと一時間は起きておかなければいけないので、それは辞めておきましょう。ここでも気になった点を2つだけご紹介します。
一つは、シリコンバレーというオープンそうで実は、クローズドな環境についてです。カルフォルニアの青空は年中高く澄み切っており、失敗しても何とかなるさという雰囲気がある。人間関係も皆、開けっぴろげで清々しい。だから失敗してもすぐに気分が楽になって起業家も立ち直る…。という誠しやかな噂があるといいます。
しかし、それは嘘である!と。実際は非情な実力主義社会であり、表面上はニコニコ笑っていたとしても裏では笑っていない。しっかりと実力を見抜かれていて、駄目だと思われたらすれ違いもしないというのです。実はそれも薄々、感じていたので、なるほど…という感想ですが、やはりドライなんですね。吉川さんはそれを「見えないガラスの壁」と表現されました。
次に二つ目のポイントは、そのガラスの壁を越えるための方法です。それは「演歌歌手のような持ち歌を持て」ということでした。色々なカラオケが無難に上手でも、そんな人はここには溢れていると。だから、これだけは世界で誰にも負けないという「十八番」を持てるかどうか。それが大切だと言われました。世界で戦うには、「研ぎ澄まされた一刺し」が必要なんですね。
ほかにも、VCとの絡み方(実践編)、身内をVCの代わりに使う方法、自分が世の中を変えるんだという強い意識、自己投資の感覚、経営者としての覚悟、シリコンバレーでのトップが世界のトップに直結すること、アドバイザーの重要性、OnとOffの切り替えの重要性、スタートアップの仲間をどう選ぶか、シリコンバレーでビジネスを起こすことの優位性、破壊的イノベーションはなぜ小企業しか起こせないか裏の事情…などなど。
本当に衝撃的でした。筋金入りの起業家だからこそ言える真実…その内容にはただただ圧倒されましたが、逆に心の底からふつふつと力が湧いてくるのを感じました。これでまだ三日目。心の底で何かが蠢いています。




(最終日)
QREP最終日。全てが終わった。世界の大投資家のロバートファンさんにもお会いして、直接お話することもできた。その他にも様々なメンターにお会いして、QREPのカリキュラムから学んだ。ここで得たものは計り知れない。
QBSの最後の授業を受けた時から、一ヶ月が経とうとしているが、今、この瞬間こそが、ひとつの区切りのような気がした。MBAで学んだビジネスの諸知識。しかしそれは、知識にすぎない。これを実践、特に自分のビジネスで活かしていくためには、スピリットが重要だ。
MBAで学んだフレームにQREPで得たアントレプレナーシップを吹き込んで、自分の学びが一つの完成形になったように思えていた。しかし、それはすぐに否定されることになる。ボブさんはおっしゃった…「そんな気づきは、ほんの些細なものだ」と。
これから動いて行く中で、本当の学びがある。本番はまさにこれからなんだ。自分の好きな事を、本当に楽しく誇れることをビジネスにして、真摯に努力をしながら、世界を相手に打って出る。
失敗を恐れず、イノベーションを起こし、世の中に価値を提供しつつ、しっかり稼ぐ。それはそんなにカッコいいものではない。泥臭く、地道で、血のにじむような努力の連続だ。けれど、ものごとに必勝法など存在しない。ただ、その積み重ねだけが、自分の未来の道を開く。70人以上のメンターに教わったことが脳内にこだまする。
私はボブさんをはじめ、全員の前で行なう最後のプレゼンスピーチで、将来的にここで得た経験を日本に持ち帰り成功し、福岡へ、日本へ、世界へ貢献することを誓った。
ボブさんの最後のスピーチは、ものすごく印象に残っている。
「シリコンバレーの力の源泉は、人と人との繋がりだ。福岡でもそれができなければ、全く意味がない。QREPを私が支援するのは、そのネットワークを作るためだ。VC、投資家、起業家、そして大学。それぞれが本当に有機的に結びつかなければ、価値にならない。それを次世代の君たちがやるべきなんだ!」
ここで得た、アントレプレナーシップをどうやって、福岡、そして九州で、形にしていくか。自分なりの貢献方法は、もう考えている。ここで受けた恩恵はひとりのものではない。数々のメンターたちへの恩返しのためにも、これからやっていきたいと思う。
ここ、シリコンバレーで国際的に活躍されている方々は、かなり効率的に動いて、それでもものすごい時間をかけて、ようやくその領域にたどり着いている。そう考えたら、私など出遅れも出遅れ。全く、話しにならない。
だからこそ、頑張る。卒業してからが、勉強だ。今までの自分の頑張りは本当に浅いものだった。これからは更にスピードアップして、自分がこの人生でやるべきことに対して責任を持って取り組みたいと誓う。



(帰国時)
二週間のシリコンバレーツアー、ミッションコンプリート。昨日、ひょんなご縁で世界的にも有名な投資家の方のお話を聞く機会があった。それはまさに今回の旅の最後に相応しく、人生の意味について深く考えさせられるひと時だった。
投資家は自分が資源を注ぐ物事に対して、最低でも10年の周期でみる。成功するのも失敗するのも、10年経たないと分からないというのだ。
10年といえば、体力も考えたらあと2、3周期しか関わることができない。目先の物事だけに捕らわれていたら、時間はすぐに過ぎ去る。
「人の人生を生きるな、あなたはあなたの人生を主体的に生きなさい」と、強調された。本当にやりたい事を追いかけて、環境に流されずに集中することはとても難しい。
けれど、後悔はしたくない。絶対に取り戻せないものは、命であり、時間だ。帰ってやるべきことは、ここでインプットした事を元に自分の本当の心の声、魂のビジョンを練り直して、次の10年の計を立てることであると悟った。
さぁ、祖国へ帰還だ。


(帰国後)
幾度となく見てきたはずの、上空からの福岡の景色。今回はいつもと少し違って見えた。日本の福岡ではなく、世界のFukuokaとして、ここを客観的に見ているような…そんな感覚だった。
サンフランシスコを発つ時に思った「今後10年の計」だが、すぐに答えが出るとは思っていない。この二年の修士生活で、良い答えを見つけるためには「良い質問が」必要であることを知った。だから、福岡までのほぼ一日かがりの旅の中で、頭をいろいろと整理して辿り着いたクエッションがある。それは「日本を再開国するために自分ができることは何か?」というものだ。
それは私がこのシリコンバレーの旅で得た三つの経験を合わせて、見出した質問だった。①スタンフォードMBAの授業、②シリコンバレーでキャリアを積む日本人、③現地でのアポ&視察。これらは一見、全く関係ないものだが、それぞれの点と点が結びついて線になった。
①スタンフォードMBAの授業
詳細は前の日記に書いたので割愛するが、まさに衝撃的な授業であった。先生は講義というよりは、質問をして生徒たちの意見やアイデアをどんどん引き出していく。生徒は予習をしっかりとしていて、それぞれが思うところを述べ、反駁し、議論が盛り上がる。今まで受けたどんな授業よりもエキサイティングであった。アメリカ国内のみならず、様々な国籍の学生が、それぞれのバックグラウンドを抱えて、相手の立場を尊重しながら、ロジックと英語を共通言語としてディスカッションする。こんな場所を日本でも作りたいと心から思った。
②シリコンバレーでキャリアを積む日本人
これはQREPのプログラムでお会いした、70人以上の現地で活躍する日本人の先輩方のお話から学んだことだ。彼らはフロンティア精神に満ちあふれ、最初から世界を狙って冒険心と行動力を武器に、シリコンバレーで戦っている。海外に出た日本人のよくあるパターンとして、やはり言語の壁を越えることができないというケースが多いようだ。せっかく優秀な日本人も、通訳を使わずに英語をきちんと話して、様々な背景のビジネスパーソンと対等に交渉していかなければ、グローバルスタンダードの中では戦っていけない。ツールを使えなくて、負けるのは本当に悔しい。だからこそ、言語は最低限使えないといけないと強く感じた。
③現地でのアポ&視察
日本からの紹介は全く無し。現地に入ってまず日本人ネットワークにアクセスし、そこから色々と紹介をして頂いた。または時には飛び込みをしながら、現地の医療機関を点々と回って、アメリカ流の医療マーケティングや高齢者の福祉施設などを見学したり、インタビューを行なった。修士論文で医療とSNSについて書いたことや、QBPHの活動などの説明を熱心にしながら、何とかしがみついていった。正直、何の保証も無かったし、英語も非常につたないものだった。しかし、先方は私を受け入れた。これは自分にとって大きな自信となった。徒手空拳の身一つでも、それが例え海外であったとしても、やれば何とかなるものだ。逆にやらなければ、何も始まらない。QREPで人生の諸先輩が言われていたことを実践して帰ることができて、本当に良かった。
以上のことを振り返りながら、やはりシュリンクする国内市場を見るのではなく、日本が本当の意味でグローバル化するために必要なことは「日本の再開国」ではないかと考えた。ここに集まっている海外の人々を繋ぎ、日本ならではの国際価値創造のエコシステムを作れないか。海外に散らばる和僑とそのネットワークを繋ぐことで、シナジーを生み出せないか。今後10年の計を出すにはほど遠いが、うっすらとしたビジョンが見えてきた。範囲が広すぎるから、まずは医療やアジアビジネス、イノベーション等、自分が興味のあるテーマにドメインを絞ってみるのも一案だが、まずは地元福岡にいる有志たちを探してみたい。


0 件のコメント:

コメントを投稿